看護師さんへ

 父はお風呂に、はいれただろうか。わたしが父をお風呂にいれたのは11月30日。入院してからは拒否が強くはいりたがらないので、清拭だけして頂いていると聞いている。お風呂でさっぱりして新年が迎えられたら、本人も気持ちいいのになぁと思う。でもやはり見知らぬ人にお風呂に入れてもらうのは、父にとっては抵抗があるのだろう。自分が認知症であることを自覚してないのだから、当たり前かもしれない。

 看護師さんが、もし手をこまねいている様ならお伝えしたいなと思うことがあります。

 父はおそらく自分が病人だという自覚はないので、ヒトサマにお風呂に入れてもらう必要はないと思っているんだと思います。

 自分で入れるのに(入れないんですが)病人扱いされて(病人なんですが)お風呂に入れさせられそうになるから、抵抗しているのではないかと思います。

 なので、別のアプローチの提案です。

 父は長男で、人に頼られることが好きなので、協力をお願いする、みたいな感じでいくと、もしかすると聞いてくれるかもしれません。

 「新人の看護師なのでお風呂実習に協力してもらえますか」とか、

 「お風呂の感想を聞きたいので入って貰えませんか」とか。

 「協力してもらえると嬉しいです」とか、「協力して頂いてありがとうございます」とかの言葉は父の大好物だと思います。お試し頂けないでしょうか。

 わたしが病院に連れて来た時も、おそらく父にふつうに病院に行こうと言ったら拒絶されると思ったので、「わたしの病院に、お父さん付き添いで来て」と言って、わたしの荷物まで持たせて病院に連れて来ました。

 家で「やっぱり行かない」という父に、何度も「お父さんが来てくれないと困るの」と泣きついて父を説得しました。おかげでなんとか大暴れされることなく、車に乗せて病院に来ることが出来ました。

 父に何かをさせようとして「××して下さい」と言うと嫌がると思います(従わされるのが嫌いです)。

 でも「××してもらえると助かります」だと承知してくれる可能性があるように思います。ノセラレやすい、という面は確かにあります。

 

 あと、入院患者さんに普通に使われるいたわりの言葉がもし効かない時は、むしろ父が出来そうもないことや、理解してなさそうなことでも、「出来てる」とか「理解している」という風に扱って頂いたら、父は満足(安心)するかもしれません。

 どういうことかというと、父は自分が病人と思ってないので、普通の人として対応してもらうのがスジと思ってると思います。

 わたしは、父がおそらく理解できなさそうな単語もあえて使ってました。子どもに言う様な言い換えはしませんでした。わたしは父が認知症だということを気づいていないふりをし続けたので、父は安心して、分からないことは「分からない」と聞いてました。父が、「今なんて言ったの?」と言ってきたら、その時はきちんと説明しました。

 父は自分でもいろんなことを忘れてしまう自覚があったのでしょう。時々、わたしに確かめる様な時もありました。「前に聞いたっけ?」とか。わたしは「ううん。はじめて言ったよ」と答えました。武士の情けです。

 父は、分からない人の様でいて、変なところはしっかりしてるので、この前もケースワーカーさんに、「いつもよくやってくれてるんですよ」なんて、ねぎらったりして、

分かってる人なんです。

 

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 お風呂の時(他の時でも)、認知症ではない人をお風呂にうながす方法を探るとうまくいくかもしれません。

 もちろん今の父の状態は、わたしが知ってる時と違うかもしれませんが、この前父と電話で話した時の感じだと、ケースワーカーさんを、美人、美人言ってましたから、案外ぼけ老人を装っているのかもしれません。

 それならどれだけいいか、と心から思います。