遠距離父さん

 父が同じことを何度も繰り返し言う様になったのは、わたしがK市に引っ越してから。そんなトシだからねと、現状を受け入れていたけれど、のんきにしていられなくなった。父が母に対して怒鳴るだの手を上げるだの、暴力老人のようなふるまいが顕著になってきたから。人は父を、そのふるまいだけで暴力的と見るけれど、そのふるまいにだって(そんな認知症ぎみの老人にだって)、理由もあれば、背景もある。

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4月18日 14時10分 ヨイワの日

 書きたいことはたくさんあったけれど、きょう半年ぶりのログインだった。

そうか。近距離父さんになってからもエピソード豊富だったなぁと思う。ぼちぼちさかのぼって書いていけばいいと思う。そんな供養もあるかな。悪口のような供養になるかもしれないけれど、化けて文句を言いに来られたら言い返そう。なんであと数秒、待てなかったの?と。

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最後の更新からかれこれ3か月。蜂窩織炎その後から

 10月12日。蜂窩織炎(ほうかしきえん)という病名がスッと出る様になったのは年寄りまわりの用語が板についてきたということか。

 救急車で運ばれた病院からは、放り出される様に父は退院させられた。

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入院決定

 病院に着いた。PCR検査の結果はシロ。足の腫れを伝えると外科の医師が来て、蜂窩織炎の診断がついた(ケアマネさんファインプレー!)。抗生剤を点滴で入れるため2、3週間の入院が必要だと説明を受けた。

 重度のアルツハイマーのため、点滴を抜いたり、暴れたりした際に拘束をしていいか、コールマット(ベッド下に敷くセンサー付きマット。ベッドを下りた際、信号がナースステーションに飛ぶ)を使用していいかなどと書かれた承諾書が用意された。もちろんサインをした。拘束は点滴の間だけということだったので。

 手続きが終わり、もうこれで安心。小さな病室で(それでも個室だから我慢してもらおう)父は不安やイライラが出そうだが仕方あるまい。治るまで看護師さんがケアしてくれるだろう。その病院は精神科や認知症患者対応をする病院だったから。そう思っていた。まさか、翌々日の7月2日、日曜の朝に「暴れて治療出来ないの退院してほしい」と電話が来るとは夢にも思わなかった。

父と初救急車

 30日。父がなかなか朝食を取ろうとしない。いつも食事の際は実家から送ったお気に入りのリクライニングチェアから座卓の前に移るのだが、この日は座布団の方に下りてこない。

 これはかなりめずらしいこと。どうしたものかと思っていると、父がリクライニングチェアに座ったまま、座卓にならぶ朝食の中から好物の山かけごはんのお茶碗を取って食べている。食欲はあるらしい。ごはんはいくらか食べたが、すぐにもういらないと言う。やはり具合が悪いのかと熱を測ると(腋から体温計がすべり落ちるのでいい加減だが)38度を超えている。コロナ?と一瞬思ったが、部屋からほとんど出ることのない父には思い当たる感染経路がない。しかしこの熱はただごとではない。ケアマネさんに連絡すると、すぐにとんできてくれた。看護師を装って。

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父の取説④ その他 '23年5月現在

  • 父には当面は敬語で接して頂けるでしょうか。会社員時代、おそらく威張っていたので、知らない人からのフレンドリーな話し方には拒否感があるかもしれません。「です・ます調」で、丁寧に接して頂くと、それに応えようとして、父の態度も紳士的になるのではないかと思います。でもじきに関係が出来てくれば、敬語などにこだわらず、接してあげて下さい。入院中の病院の看護師さんによると、機嫌のいい時は手のかからない認知症老人だったそうです(お世辞かな?)。
  • アルツハイマーが進んでからも公共交通機関を乗り継いで目的の店で飲食や買い物などが出来ました。その際、手押し車の高齢女性のために、手押し車をバスに上げてあげたりしていました。乱暴者の父ですが、案外人に親切にしたい気持ちは残っている様です
  • 入院時、看護師さんなどに頻繁にねぎらいの言葉をかけていました。今も送迎して下さったデイサービスの方に感謝の言葉が出ます。そういった時に仲良くして下さると記憶には残らなくても、感覚として残る様です
  • テレビや本は好きです。それらを見ている際、父はその場面に出てくる風景は全て見たことがある、行ったことがあると言います。「そうなんだー」「わたしは行ったことないなぁ」というと満足します。実際には父は行っていないので(行っていたとしても覚えていないので)「どんなところでしたか?」「いつ頃行きましたか?」といった具体的な質問は避けて頂けると助かります。答えられない質問はストレスの様で、怒り出しちゃうので
  • 入院していた病院のレクでは、人の輪を外れて少し離れた場所に座っている時は落ち着いていたと聞いています。人との距離が近い時に不穏になる様です。特に騒がしさに敏感に反応する様なので、そういったシチュエーションになりそうな時は、父は要注意人物です
  • 食事は一人で大丈夫です。しかも早い方だと思います。父は片付けたがりのため、早めに下げてもらうと助かります。そばにティッシュなどがあると残したものを隠すために際限なく使ってしまいます。家ではティッシュの代わりにトイレットペーパーをひと巻き置いています。取りにくいのでちょっとしか使えないため経済的です。またゴミをすぐトイレに流すので、トイレのつまり予防にもトイレットペーパーだと安心です
  • トイレは場所をうなせば一人で行けます。実家も入院していた病院も自動洗浄の便器だったため、流さないで出ることが多いです。特に立ってトイレを使った時に流さない様です
  • 腰と右手の親指の付け根に時折痛みを訴えます。腰の痛みは、家で長椅子に座ったままうたた寝していることがあるため、姿勢が悪いせいだと思います。親指の付け根は慢性的で原因は分かりません。病院に行こうとか、マッサージしようか?というと、痛みはない!と突っぱね、お風呂に入ってあっためてみたら?と言うと「大丈夫!」と言ってそれ以上痛みを訴えません。本当に外科的な痛みがあるのか不明です。

  

お試しデイサービスでいただいた報告書より





 

 

父の取説③ 運動をしたがらない と 空腹を訴える 対策 '23年5月現在

  • 運動をしたがらない時

 定年後から2021年までスポーツクラブにほぼ毎日通っていて、併設の温泉に入ってから帰宅していました。マシンなどは体が覚えていると思います。

「こういう機械は使えますか?」とか挑発すると、熱心に取り組むかもしれません。

 スポーツクラブの後、必ずお風呂に入っていたので「体動かした後、いつもお風呂に入っていたじゃないですかー」などと、いつもやってますよという風に促すと、「そうだったかな?」と思うかもしれません。試して頂けますか。

  • 空腹を訴える時

 「朝ごはんを食べていない」などと言う時もありますが、わたしは、「朝ごはんしっかり食べていたよ。さっきうたた寝してたから忘れちゃったんだね。わたしもお昼寝すると、起きた時に朝だか昼だか分からなくなる時あるもの」と言うと納得してました。

 「○○時にはお昼ごはんなので(あるいは「おやつの時間なので」)もうちょっと待ってて下さい」というと、その場はおさまると思います。父には予定時刻など(食事だけでなく、帰宅時刻なども)、はっきり何時何分と伝えて下さい。ルールは守りたいと思っている様です。ごまかすと怒ります。ただ助かるのは、○○時△△分と伝えてもすぐに忘れるので、予定の時刻より早い時刻を伝えても何ら問題ありません。

 「11時30分にお昼ですからちょっと待ってて下さい(本当は12時だとしても)」とか、「あと30分でお昼ですよ」と言っても30分という時間を覚えていません。その場の安心を優先してあげて下さい。

父の取説② 威嚇動作とお風呂 対策 '23年5月現在

  • 強さを誇示したり(ファイティングポーズ)、突然人を威嚇(いかく)する、手を上げるなどした時

 もし可能であれば、ほがらかに「中村さんは強いんですねー」とか

「わたしも負けてませんよー」とか、深刻に受け止めないで頂けると矛先(ほこさき)が鈍(にぶ)ると思います。

 優しい方や、小柄な方、おびえる方等に居丈高(いたけだか)になる様で、体格のいい方には大人しくしている様なところがあります。

 気を使いすぎるとナメてかかる様なところもあるので、自信たっぷりにして頂けると助かります。

 また怒った様にふるまっていても、ふいに目線をそらして、今起こったことはなかった様にこちらがふるまうと、つられて父も怒ったことを忘れる様です。利用者さんがいない場所でしたら、わりとコントロールできるのではないかと思います。

 わたしも父の目の色が変わってヤバイ感じの時には、何も言わず父に背を向けて、1、2分後に普通に「おやつ食べる?」等と明るく言うと元に戻っています。そのせいか、叩かれたり暴言を吐かれたということはありません。

 父がやおら誰かにファイティングポーズをとった時、「お父さん、わたしの方が強いよ。武道やってたからね」と言って構えてみせると蹴りの仕草などはしますが、へなちゃこなので、実際に当たることはありません。大概はそれ以上に発展することなくおさまります。

  • お風呂に入りたがらない時

 父への声かけとしては、

「汗を流したら気持ちいいですよ」とか

「ここのお風呂はタダなので入っていかれたらいいですよ」

など、盛り上げて頂いたら入るかもしれません。(それでもなかなかうまくいかないのですが…)

「娘さんが洗い場で待ってるから行きましょう」と言って服を脱がすとかも試して頂けたらと思います。(何かとわたしを引き合いに出して下さい。大したことしていない娘ですがなぜか信頼が厚くて)

 あるいは、いつもここのお風呂を使っているという感じで促すのも父には効果ありかもしれません。

「アレ?きのうはさっぱりしたと言ってましたよ。今日もどうですか?」とか。

 

 温泉施設に行って、父をお風呂に入れてくれている夫からも2、3付け加えさせて頂きます。

・下着を脱がないのは、羞恥心があるからだと思います。浴用タオルなどを渡すと前を隠せるので安心して脱いでくれます

・洗髪、洗体は自分で出来ます。転ばない様にだけ注意して頂ければ大丈夫です。