ケースワーカーのSさんから電話が来た。昨日わたしが、父と電話で話しが出来るのはいつか伺っていたので。
Sさんが父に「娘さんから電話があったので、かけてみますか?」と言って下さったとのこと。父は嬉しそうに応じたらしい。わたしも電話でそのことを聞いて思わずガッツポーズした。
2週間ぶりだ。「毎日電話」の最後が14日だった。2週間ぶりに父の声を受話器越しに聞いた。
ふわふわした声だった。水中で父の声を聞いているような。薬のせいなのだと思う。父の本当の声ではなかった。笑いを含んだ声なのだけれど、なぜか敬語。
ふわふわしてるのは、声の調子だけではなく内容もふわふわしていた。
12月28日 14:42pm
T.《最初の方は聞き取れない》ソーシャル???のSさん
H.ソーシャルケースワーカー?
T.いろいろやってくれるんですよ
H.うん(笑)
T.このままね用宗に帰りたいんですが、どうして帰ったらいいんですかねぇ
H.うん
T.経費ならわたしが払いますからね
H.うん…
T.もしもし?わかる?
H.はいはい。用宗帰りたいの?
T.×××《電話が遠くて聞こえない》
H.うん、うん《ひたすら相槌をうつ》
T.…×××しなくなっちゃったもんで、ここアレだよ、中村家のうちだよーというのはね、言ってもらってね
H.うんうん
T.わたしが乗ってるのもね。車でね、ここ寄ってくれーってさ。もう心配してるからね
H.そうだね。しゅうちゃん心配してるね。きっと
T.でもねぇ。ここも一生懸命やってくれてるんですよ
H.あぁそうかぁ
T.そんなもんですから。ふふふ
H.そっかー。うんうん
T.全部さ、アレを金を渡したって×××女に《「女に」と聞こえたが違うかも》
H.《世話をしてくれている女性の看護師さんに、お礼にお金を渡したいと言ってるととって》そう?大丈夫じゃない?
T.そんなことやる必要まったくなかったのにさ。自分ところもあるもんだよね
H.《意味が分からなかったけれど》うんうん
T.とりあえずは、まだうちにもう用意してあるんだったら、あれだよ。あの…車を出す。こっちが車でするーっと一人で行かないとダメでしょ?
H.しゅうちゃんが多分運転してくれるよ
T.あ。しゅうちゃんが運転してくれる?
H.うん、そうだよ
T.じゃ、おれこっちで待ってればいいわけ?
H.うん、そうそう、そうだよ
T.あーそう。はいはい
H.安心して
T.いやーありがとう。早く来るのを待ってます
H.そうだね。ま、でもそこ暖かいだろうから、くつろいで、楽しんでてちょうだい
T.はいはい。《ケースワーカーSさんに》おれは待ってるって、どこで待ってたらいい?
S.ここで待ってたら大丈夫です
T.あ、ここでね。ここでいいのか。上がって来てね呼んでもらえば結構です。美人のアレが言っとくって言ってるからね
H.よかったね(笑)よかったですねー(笑)
《父がふいに受話器を置いた》
通話時間4分8秒
こうして録音を聞きながら文字起こしをすると、ほとんど何を言っているのか分からない。声に前の通りの親しみがこもっていたので、わたしと分かって話していると思いながら受け答えしていたけれど、文字にすると敬語ばかり。父の感覚の中では娘に話しているのではなかったのかもしれない。
それでも話したい言葉はまだたくさんあるみたいだった。田舎に帰りたい気持ちもあふれている。
しかし、また騙してしまった。しゅうちゃんの車を楽しみに待ってるところを想像するとつらい。