父入院 その2「からのトイレットペーパーホルダー」

 16日の入院に向けて、15日の飛行機をとった。早い時間はとてつもなくチケット代が高かったので夕方の便をとったのだけれど、出発が40分遅れ、実家に着いた時には、父はもうベッドに入っていた。うっかり起こして明日に障るといけないので、そのまま隣室で寝たのだが、夜中に父がトイレに入ったのが分かった。わたしもつられて、父のあとトイレに入った。

 愕然とした。トイレットペーパーホルダーにペーパーがない。どこを見渡しても、トイレットペーパーがない。わたしが12月1日に泊まった時にはペーパーはあった。いつから入ってないのだろう。大きい方をした時、父はどうしていたのだろう。父はあきらめてそのまま下着を履き、部屋に戻ってペーパーを探そうとしたに違いない。けれどほんの数歩しかない部屋まで記憶がもたない。部屋には父が買いためたトイレットペーパーがあちこちに積んである。わたしが寝ている部屋にもいくつもトイレットペーパーはあった。それでもペーパーホルダーに補充することが出来なかった。日に何度も、便座に座りトイレットペーパーがない!ということを繰り返したのだろう。尾籠なだけに無念さが切ない。

 父はもう2階の自室で生活することは出来ないのではないかと、この時はじめて実感した。ペットカメラを設置するだとか、アレクサを入れるとか、サポートする機械があれば、ヘルパーさんの手を借りながら、父は自身が愛したこの家で、父らしくなんとか暮らしていけるのではないかと思っていた。けれど、もうそういう段階ではないという現実を突き付けられた。